上智福岡中学高等学校

Weekly "Sophia Fukuoka" Information今週の上智福岡

  1. TOP
  2. 今週の上智福岡
  3. 思索の時間 豊かさとは?

2020年11月11日

思索の時間 豊かさとは?

ホームページがリニューアルして、ようやく今週の上智福岡も更新できるようになりました。

リニューアルの間に学年ごとの行事も行われました。その報告はいずれ出したいと思います。

今日は思索の時間の放送で話された内容です。

今日は「豊か」について考えてほしいと思います。

「豊か」という言葉にどんなイメージを持つでしょうか?

辞書で調べてみますと、1、満ち足りて不足のないさま。十分にあるさま。2、経済的に恵まれていてゆとりのあるさま。3、心や態度に余裕があって落ち着いているさま。4、量感のあるさま。5、他の語について、基準・限度を超えているさま。 を意味します。

この意味を踏まえまして、皆さんにとって「豊か」とは何を示すでしょうか?時間とは限られたもので、一日24時間しかなく、皆さんの寿命もいつかは終わりがやってきます。限られた時間の中で豊かな時間を過ごすためにはどうしたらいいのでしょうか。

日本には二十四節気というように、太陽が移動する天球上の黄道を24等分したものがあります。春分、夏至、秋分、冬至などもその24等分にしたものの1つです。冬至と聞けば雪が降り、寒くなってヒートテックを着込み、お風呂には柚子が浮かんで・・・・なんて情景を思い浮かべるのではないでしょうか?このように、二十四節気から自然、「生」を感じとることができるかと思います。しかし、現代の私たちの時間はカレンダーや時計によって管理されています。教室にかけてある時計を見てみてください。「うわーまだ思索の時間が3分しかたってない・・・」何て思いませんでしたか? 絶えず時間が圧迫し、過ぎ去っていく時間ばかりを感じてしまいますね。

先日テスト2週前となりましたが、時間に追われていくのではなく、限られた時間の中でどう時間を作り出すか。それが豊かな時間につながるのではないでしょうか?計画を立てて勉強している人もいるかと思いますが、「10分理科の問題集を解く」と決めて計画を立て時間に追われるよりも、「理科の問題集を分かるまでやっていたら10分経ってしまった」という方が皆さんにとって豊かな時間になるのではないでしょうか。

 

さあ、身近な豊かについて話しましたので後は世界規模の豊かについて考えてみましょう。

世界で最も貧しい大統領としてしられるウルグアイのムヒカ大統領が2012年のリオ会議で行ったスピーチを紹介します。日本語訳されたものを一部省略しながらお話ししようと思います。

「私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球へやってきたのです。

人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が世界のモーターとなっている世界では、私たちは消費をひたすら早く、多くしなくてはなりません。

消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。このハイパー消費を続けるためには、商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、10万時間も持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!

そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので、作ってはいけないのです。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいることに、お気づきでしょうか。

これは紛れもなく政治問題ですし、この問題を別の解決の道に進めるため、私たち首脳は世界を導かなければなければなりません。なにも石器時代に戻れとは言っていません。マーケットを再びコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。

昔の賢明な方々、エピクロス(古代ギリシャの哲学者 快楽主義の祖)、セネカ(小セネカとも:古代ローマの哲学者で、皇帝ネロの家庭教師を務めた)やアイマラ民族(南米の先住民族)までこんなことを言っています。

『貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ』。これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。国の代表者として、リオ会議の決議や会合に、そういう気持ちで参加しています。

私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことをわかってほしいのです。根本的な問題は、私たちが実行した社会モデルなのです。そして改めて見直さなければならないのは、私たちの生活スタイルだということ。

私は、環境に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。しかし、世界でもっとも美味しい牛が、私の国には1300万頭もいます。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は牛肉やミルクの輸出国です。こんな小さい国なのに、領土の80%が農地なのです。

働き者の我が国民は、毎日一生懸命に8時間働きます。最近では6時間だけ働く人が増えてきました。しかし6時間労働の人は、その後もう一つの仕事をし、実際には更に長く働かなければなりません。なぜか? 車や、その他色々なものの支払いに追われるからです。

こんな生活を続けていては、身体はリウマチに全身をおかされたがごとく疲弊し、幸福なはずの人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。そして、自分にこんな質問を投げかけます。

『これが人類の運命なのか?』私の言っていることはとてもシンプルなものです。

発展が幸福の対向にあってはいけないのです。発展というものは、人類の本当の幸福を目指さなければならないのです。愛、人間関係、子供へのケア、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。幸福が私たちにとってもっとも大切な『もの』だからなのです。

環境のために戦うのであれば、幸福が人類の一番大事な原料だということを忘れてはいけません。」

「豊か」というテーマでお話しをさせていただきました。皆さんの人生が少しでも豊かになるいいきっかけになればいいなと思います。これで思索の放送を終わります。