上智福岡中学高等学校

Weekly "Sophia Fukuoka" Information今週の上智福岡

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2025年12月23日

2学期始業式 校長講話

 皆さん、年間で一番長い2学期が終わろうとしています。この学期の中で、どれだけ自分の力を伸ばせたでしょうか。さらにどれだけ「喜ぶ人ともに喜び、泣く人とともに泣く人」になれたでしょうか。
 実は、十日ばかり前、63期の卒業生からこんなメッセ―ジをいただきました。
 

 「先日、上智福岡の生徒さんが妊娠中の妻に席を譲ってくれてとても助かりました。直接お礼を伝えられず心残りですが、また機会があれば感謝を伝えたいとおもっています。」
 

 なんて嬉しいメッセージでしょう。皆さんの中の誰かが、妊婦さんに座席を譲ってあげたのですね。わたしたちの中にそんな人がいるなんて素敵なことです。たまたま妊婦さんは先輩の奥さんでしたが、ちょっと想像してみましょう。皆さんが将来お腹に赤ちゃんができた時に、あるいは皆さんの奥さんが身重になった時に、誰かが席を譲ってくれたら、それだけでうれしいでしょうが、それが上智福岡の制服を着た後輩ならうれしさもひとしおでしょう。先輩の奥さんも先輩もさぞかし嬉しかったと思います。一方、席を譲ってあげた誰かさんも、ドキドキしたでしょうけど、譲った後は心満たされる思いだったことでしょうし、このエピソードを聞いている私たちも、今、心温まり幸せな気持ちにさせてもっています。
 さて、先ほど私たちはクリスマス式典に与りました。いよいよ明日は、イエス様がお生まれになった夜、クリスマスイブです。キリストの教えを信じる人々にとっては、それは救い主がお生まれになった聖なる夜、罪深い私たちを救うために、わたしたちの身代わりとなって十字架で死ぬ独り子を神様がこの世にお与えになった特別な夜です。
 そのイエス様がこの世で身をもって示された教えは実は非常に単純です。それは真の平和と幸せは、「誰かに自分を割いて与えること」でこそもたらされるということです。クリスマスを待つこの季節、皆さんはきっとプレゼントに何をもらえるか楽しみにしていることでしょう。クリスマスのその喜びに与れる私たちは、さらに次のような人たちに思いを馳せたいものです。それは、ひとりでクリスマスを迎える人、ケーキが買えないお家、病気で寝ている方々、家がなくひとり外で寝ている人たち、それからクリスマスなのに家族から遠く離れた異国の地で働いている外国人の方々など、心で泣いている人たちのことです。聖書にはこのように書かれています。


「イエスはわたしたちのために、命を捨ててくださいました。そのことによって私たちは愛を知りました。だから、わたしたちも兄弟のために命を捨てるべきです。世の富をもちながら、兄弟が必要なものに事欠くのを見て同情しないものがあれば、どうして神の愛がそのようなもののうちにとどまるでしょう。子たちよ、言葉や口先だけではなく、行いをもって誠実に愛し合いましょう。」(ヨハネの手紙 3.16~18)
「喜ぶ人とともに喜び、泣く人とともに泣く人」を目指す私たちにとって、クリスマスは何かをいただく喜びだけではなく、必要なものに事欠く人とともに泣き、その人のために自分を割いて与え、それによってもたらされるより深い喜びを感じる季節にしたいものです。特に今、世の中には「自国ファースト」といった、多様な他者とともに生きることを否定する風潮が強まっています。そのただ中で、上智福岡の私たちが目指すのは、ファーストもセカンドもない、誰かのために自分を割いて与える「他者のために、他者とともに」の生き方です。私たちとって最も重要なことは、「何かを手に入れるため」だけに生きるのではなく、「誰かのために」に生きること、つまり大切なのは「何をどれだけ手にしたか」ではなく、「それをどれだけ誰かに割いて与えられるか」なのです。
 冒頭に話した誰かさんは、妊婦さんのために自分の席を譲りました。そしてこの行為は、奥様と先輩だけではなく、譲った本人も、さらには私たちの心をも温かくしてくれています。このように、「誰かに自分を割いて与える」というイエス様の単純な教えこそが、自他ともに真の平和と幸せをもたらすのです。皆さんは誰のために何を割いて与えられるでしょうか。身近な人から自分を割いて与え、周りの人も自分も幸せになるようにしていきましょう。
 それでは、皆さん良いクリスマスと、良い年をお迎えください。そして、高校3年生の皆さん。皆さんにとっては、これが最後の冬休みとなります。私たち教職員一同、そして後輩みんなで、皆さんが目指す道に進めるよう、心から成功を祈り、応援します。精いっぱい頑張ってください。