3月3日(月)に77期の卒業式が行われました。 以下、学校長の訓辞です。
77期の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業を心よりお祝い申し上げます。「何事にも時があり、天の下の出来事にはすべて定められた時がある」(コヘレト3.1)と聖書にもあるとおり、ここでの皆さんの中高生活は本日をもって終わりを迎え、4月からは一人ひとりが新たな道に進むことになります。先ほどの言葉の後は「人間にとって最も幸福なのは、喜び楽しんで一生を送ることだ」という言葉が続きます。わたしたちはこの6年間様々なことを教えてきましたが、それらのすべてをとおして、大切な皆さんに何よりも教えたかったのは、まさにどうすれば最も幸福になれるかということです。こうして皆さんの前でお話をするのも最後となる今日は、それを叶えるための二つの智慧についておさらいをしたいと思います。
では、まずは「喜び楽しむ一生を送るための智慧」についてお話しいたしましょう。振り返ってみれば、6年前のちょうど今頃、わたしたちは突然のコロナにより臨時休校を余儀なくされていました。そして、皆さんの入学式は4月から遅れること一カ月半の5月25日に、お父様もお母様も来られず、体育館ではなく4つの広い教室に分かれて放送で行われるという異例ずくめの形となってしまいました。このように、いくら幸せでいたくても思い通りにならないのが人生です。そんな中でどのような智慧があれば、喜び楽しむ一生を送ることができるでしょうか。改めて当たり前の学校生活を奪われた当時を思い起こしてみましょう。
皆さんは入学した当初から、マスク着用、手指消毒、前を向いての黙食、ソーシャルディスタンスを強いられ、あらゆる学校行事ができず、部活動が制限される日々が長く続きました。この頃、すべてを奪われた私たちは、そのすべてがあったコロナ前の当たり前の日常が、いかに恵まれていたかを痛感しませんでしたでしょうか。あるいは、3年目が過ぎたころから、一つ、またひとつと制限が緩和されるたびに私たちはその有難みを感じませんでしたでしょうか。それはひとえに、私たちがすべてを奪われ、何もできないどん底の貧しさを知ったおかげで、恵みをあるがままに恵みと思えるようになったからです。ここに智慧の種があります。もし私たちが、この「心の貧しさ」と言える、物事をどん底からみる目を持つことさえできれば、どのような状況にあっても、何事も当たり前ではなく有難いと思えるでしょうし、現状に不満を抱かず、喜ぶことができます。イエス様が「心の貧しい人は幸いである」(マタイ5.3)と言われるとおり、「喜び楽しむ一生を送るための智慧」とは、何事もどん底から見て感謝することができる「心の貧しさ」を常に持つことなのです。
ではつぎに、「最も幸せになるための智慧」についておさらいいたしましょう。上智福岡の私たちが目指すのは、友のために自分を割いて与える「他者のために、他者とともに」の生き方です。ところが、皆さんがやがて活躍をする社会では、物質的な豊かさや、権力、名誉を手に入れることが成功のバロメーターとなっています。もちろん物質的な豊かさや権力、名誉はあるに越したことはありません。しかし、それらを幸福のバロメーターとはき違えてしまうと、まるで塩水を飲むかのように、得れば得るほどますます渇望し、永遠に幸福感が満たされることはありません。「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何の得があろうか。」とイエス様はおっしゃっています。一生を終えてのちに残るものは、我々が集めたものではなく、我々が与えたものです(三浦綾子『続氷点』より)。最も幸せになるための智慧は、「何かを手に入れるため」に生きるのではなく、「誰かのため」に生きること、「何をどれだけ手にするか」ではなく、「それを誰にどれだけ割くことができるか」にあるのです。身を割くような苦労をして人のお役に立てた時、苦労がそれ以上の喜びとなって返ってくる体験は、皆さんが中心になって作り上げた文化祭「翡翠」や、全生徒が「星繋(ほし)」の名のもとに一つに繋がった体育祭はじめ、様々な活動の場で幾度となく体験したはずです。自分を他者のために割き、他者とともに分かち合うこと、これこそが「最も幸せになるための智慧」なのです。
今日まで6年間、上智福岡で学んだ皆さんは、さらにこれから自分の進む道で神様から頂いているタレントを磨こうとしています。やがて世の中に出たら、そのタレントで物質的な豊かさ、あるいは権力、名誉をも手に入れるかもしれません。しかし、それらの有無、多少にかかわらず、今おさらいをした二つの智慧こそが、真の幸福をもたらしてくれます。それをここで学んだ皆さんは、何事もどん底から見て感謝できる「心の貧しさ」を生涯持ち続けてください。そして、いただいたタレントで得られたものを、他者のために割き、他者とともに分かち合ってください。この智慧を活かして皆さんが喜びと楽しみに満ちた最も幸福な人生を力強く歩んでいくことを心から祈念して、卒業に当たってのお祝いの言葉とさせていただきます。77期の皆さん、改めてご卒業おめでとうございます。
